住宅などの建物を守るために非常に重要となる工事が「防水工事」です。
建物の劣化の敵となるのは「水」です。水を使用する浴室やキッチンなどに防水工事が必要なように、外からの雨水を建物内部に侵入させないために屋上やベランダなどにも防水工事が必要です。
防水工事にもいくつか種類があり、その特徴や施工する箇所の状態などで選ぶ工法が変わってきます。
本記事では防水工事の種類やそれぞれの特徴について解説します。防水工事をお考えの方は事前知識としてぜひ参考にしてくださいね。
目次
防水工事は4種類|ウレタン防水・アスファルト防水・シート防水・FRP防水
防水工事は主に屋上や陸屋根(平らな屋根)、ベランダといった雨や雪に晒され、水が溜まりやすい箇所に施されます。
外壁も雨雪に晒されるため防水対策が必要な箇所ではありますが、基本的には外壁材や塗装で対応するため、ここでいう防水工事は主に上記の箇所で施工される工事を指します。
代表的な防水工事の種類は大きく分けてウレタン防水・アスファルト防水・シート防水・FRP防水以下の4つです。
工事を検討する上で気になる特徴と費用相場、耐用年数について簡潔に以下の表にまとめました。
特徴 | 費用相場(1㎡あたり) | 耐用年数 | |
ウレタン防水 | 場所を選ばぬ万能性 | 5,000~7,000円前後 | 10~15年 |
アスファルト防水 | 最も高い耐久性 | 5,000~8,000円前後 | 15~30年 |
シート防水 | 低コスト・短工期 | 4,000~6,000円前後 | 10~15年 |
FRP防水 | 軽さと耐久性の両立 | 5,000~8,000円前後 | 10~12年 |
それぞれの工事でも工法や素材の違いによって多少差が生まれます。また、耐久年数に関わらず約5年ごとにトップコートという表面に塗る塗料を塗り替えるなどメンテナンスは必要になります。
それぞれの特徴については以下より詳しく解説していきます。
ウレタン防水の特徴とメリット・デメリット
ウレタン防水とは、液体状のウレタン樹脂を複数回塗って、塗膜による継ぎ目のない防水層を形成する工事です。
ウレタン防水の最大の特徴は場所を問わない万能性にあります。基本的にはどんな場所・どんな形状でも施工を行うことが可能。塗装なので建物への負担も少なくコスト面に優れています。
施工する側から見れば性能と使い勝手の良さをあわせ持ち、依頼側から見れば比較的低コストで済ませられると双方よしの工事ということで、特に住宅などでは採用されることが多い工事ですね。
デメリットとしては、塗装であるゆえに職人の技量によって出来が左右されるという点です。詳しくは後述しますが、技量のない業者だと下地や防水層の処理が甘く、防水層が膨らんでしまうというトラブルが起こることもあります。そのため、確かな技術や実績をもつ業者を選ぶことが重要になります。
メリット | デメリット |
・施工場所を選ばない ・施工費用が比較的安価 ・建物への負担が少ない | ・出来が職人の技量に左右される ・ウレタン樹脂特有の匂いが発生する |
ウレタン防水の工法は2種類|密着工法・通気緩衝工法
ウレタン防水には「密着工法」と「通気緩衝工法」の2つの工法があります。
密着工法は下地にウレタン樹脂を直接塗るというシンプルな工法です。後述する通気緩衝工法に比べると安価かつ短期間で行えますが、下地の影響を直接受けるため雨漏りしてしまっている箇所には施工できません。
下地が水分を含んでいる状態で防水材を塗ってしまうと、内部に残った水分が蒸発して塗膜を内側から押し上げてしまう「膨れ」という不具合を引き起こしてしまいます。
膨れが起こると塗膜が割れやすくなり、そこからさらに雨水が侵入し劣化してしまう危険性があるため、雨漏りした箇所への密着工法はできないのです。
水漏れしていたり、下地などに水分が含まれていそうな箇所へのウレタン防水を行うには「通気緩衝工法」を採用します。通気緩衝工法は下地に「通気緩衝シート」というものを貼り、その上からウレタン樹脂を塗り固める工法です。
通気緩衝シートには無数の小さな穴が空いているため、蒸発した内部の水分や湿気がその穴を通って外へ逃げていくという仕組みですね。密着工法よりはコストも工期もかかってしまいますが、耐久性は高くなります。
アスファルト防水の特徴とメリット・デメリット
アスファルト防水は、アスファルトを用いたアスファルトシートと呼ばれる防水シートを用いて防水層を形成する防水工事です。防水工事の中ではもっとも歴史が古いため、実績という点では非常に信頼のおける工事方法ですね。
アスファルト防水の最大のメリットは、防水工事の中でも最も高い耐久性を誇る点です。他の防水工事の耐用年数はある程度の差はありますがおおよそ10〜15年の範囲内ですが、アスファルト防水の場合は20年、長ければ30年近く耐えることもあります。
一方で、アスファルトという材質や重さゆえに施工できる箇所は狭まるというデメリットがあります。
重さがある分建物には負担になりますので、基本的に一般住宅ではあまり採用されません。人や車の出入りがあり高い耐久性が必要なビルやマンションの屋上などの大規模な建物で主に施工される工事ですね。
メリット | デメリット |
・歴史が古く信頼性がある ・耐用年数が非常に長い | ・重量があり建物への負担がかかる ・施工可能な場所が限られる ・匂い、煙の発生・施工技術が必要 |
アスファルト防水の工法は3種類|熱工法・常温粘着工法・トーチ工法
アスファルト防水には「熱工法」「常温粘着工法」「トーチ工法」の3つがあります。
熱工法は溶かしたアスファルトを接着材としてアスファルトシートを貼り付ける工法です。比較的短工期で工事が完了し、防水性能も後述の2つと比較して最も高いのがメリット。
デメリットとしては工事が広い箇所に限定される点と匂いや煙が発生してしまう点です。アスファルトを溶かすために溶融釜という大型の設備が必要となるため、狭い場所ではどうしても難しくなります。加えて焼けたアスファルト特有の匂いと煙も出てしまうので近隣のご理解が必要となるかもしれません。
常温粘着工法はアスファルトを溶かさず常温でアスファルトシートを接着する工法です。熱を使わないので熱工法との対比で「冷工法」とも呼ばれています。
この工法で使用するアスファルトシートには裏に粘着層がコーティングされており、この粘着層で接着するためアスファルトを溶かす作業が不要となるわけですね。
これにより広い場所での工事のみ・匂いの発生・煙の発生という熱工法のデメリットがすべて解消されました。
しかし、アスファルトで接着を行わないぶん防水層の密着度が低くなり、防水性能が下がってしまうのが弱点です。
トーチ工法は熱工法と同じく熱でアスファルトを溶かしますが、こちらはシートの裏側にアスファルトが張り付いているものを使用し、このアスファルトをバーナーで炙り溶かして接着していくという工法です。
このトーチ工法の手法だとその場でアスファルトをバーナーで溶かし、シートを接着すると効率的な動きができるようになりました。
大型設備である溶融釜が不要になることで匂いや煙の問題も改善され、狭い場所でも施工が可能になるなど熱工法のデメリットをカバーしつつ、コストパフォーマンス面でも優秀であるため最近のアスファルト防水の主流となりつつあります。
しかし、高度な技術が必要になる点はデメリット。技量がないと施工不良によって逆に劣化が早まることもあるため、腕のある業者選びがカギになるでしょう。
シート防水の特徴とメリット・デメリット
シート防水とは、塩ビ(塩化ビニル)樹脂やゴムなどを素材とした防水シートを接着剤や専用の機械などで下地や緩衝材の上に固定することで防水層を形成する工法です。
シート防水は他の防水工事と比較してコストが低く、工期も短いのが最大のメリット。基本的にはシートを貼り付ける作業で完結するため、アスファルト防水のように大掛かりな機材が必要でもなく、ウレタン防水や後述するFRP防水のように塗膜を乾かすような手間もありません。その分安く短く済むということですね。
デメリットとしては複雑な形状には対応できないという点です。シートをしっかり貼り付けるには接着面が平らでなければなりません。凸凹があったりすると隙間が生まれやすく、そこから下地や防水シートの劣化、雨漏りへと繋がってしまうのです。
シートの素材は塩ビとゴムの2種類があります。ゴムシートは耐候性と伸縮性、塩ビシートは耐候性と紫外線や熱、オゾンに対する高い耐久性をもつという特性がありますが、現在主に採用されているのは塩ビシートです。
ゴムシートはシート同士が一体化せず防水性能に劣る、鳥害などに弱いというデメリットがあるのですが、塩ビシートはこのデメリットをカバーできます。
鳥害にも強く、シート同士が重なる部分に熱を当てて溶かして一体化も可能です。色や模様のデザインが豊富など意匠性に優れるという点もポイントですね。
メリット | デメリット |
・耐候性に優れる ・伸縮性が強い(ゴム) ・紫外線、熱、オゾンに強い(塩ビ) ・工期が短い ・価格が安い | ・平らではない場所には向かない ・鳥害に弱い(ゴム) |
シート防水の工法は2種類|密着工法・機械的固定工法
シート防水には「密着工法」と「機械的固定工法」の2つの工法があります。
密着工法はウレタン防水での解説と同様、下地に直接貼り付けるというもの。下地の影響を直接受ける以上、雨漏りなど水分が含まれている箇所では使用できません。
雨漏りなどの影響を克服した工法が機械的固定工法です。こちらは固定ディスクという機械を用いてシートを貼り付けます。この工法の場合は下地の影響を受けないため、下地の処理なども最小限で済みます。
FRP防水の特徴とメリット・デメリット
FRP防水とはウレタン防水と同じく塗膜による防水の一種で、ガラス繊維で出来たシートを敷いた後に上からプリエステル樹脂を塗装して硬化させ、防水層を形成する工事です。強化プラスチックであるFRPの性能を防水に応用しており、防水層が軽量かつ強靭である点が最大の特徴です。
人や車の通行にも耐えられる耐久性を持ち、防水性能も高く、しかし建物への負担は少ない。塗装なので複雑な形状にもある程度対応が可能で、硬化速度も早いため工期も短いという他の防水工事のいいとこ取りのようなメリットを持ちます。
しかし、FRP防水にはプラスチック素材であるがゆえのデメリットも存在します。
ひとつが紫外線に弱いという点。紫外線に長期間晒されると劣化してヒビ割れてしまいます。これを防ぐために保護層であるトップコートの塗り替えは欠かせません。
もうひとつが伸縮性がない点。特に日本では地震が多いので、建物が地震で揺れた際に伸縮性がないFRPの防水層がヒビ割れを起こしてしまう可能性が高いです。そのため、屋上のような広い床面をFRP防水で施工することはあまりおすすめできません。
その他、施工の際に化学物質の発生による臭気が発生する点やリサイクルが難しい素材である点もデメリットと言えるでしょう。
メリット | デメリット |
・軽量で建物への負担が少ない ・耐久性に優れる ・工期が短い | ・紫外線に弱い ・伸縮性がなくヒビ割れのリスクが高い ・化学物質による臭気の発生 ・リサイクルが難しい |
適切な防水工事の種類は専門業者に見極めてもらおう
これまで解説してきた4つの防水工事の特徴を比較すると、防水工事を行いたい場所にどのような工事が適切か大まかに分かってきます。
形状が複雑であればウレタン防水の出番ですし、屋上などの広い場所でも人や車が出入りしないのであればコスパ的にはシート防水がいいかもしれません。逆に車や人が出入りして強い耐久性が欲しいならばFRP防水やアスファルト防水が候補にあがってきます。
DIYで工事をしたい方は、このように自身で施工したい箇所に適した工事を考えることも可能ですが、基本的に防水工事は専門の業者に依頼して施工してもらう方がベストな選択です。
施工場所の広さや形状、下地の状況、予算や工期、周囲の環境など、複数の要素を考慮して最適な工事を決めるため、専門的な知識や経験がないと正しい判断を行うのは難しいです。また、工事内容も未経験がいきなり完璧に施工できる難度のものではありません。
失敗すればさらなる劣化や雨漏りにつながる重要な工事ですので、失敗は避けたいです。現地調査・見積もりを無料で行う業者も多いので、是非専門業者へ相談しましょう。
防水工事もお任せ!塗装職人直営のトラスト美装が力になります
防水工事はそれぞれに特徴が異なり、施工する箇所や状況などによって最適な工事を選ぶことが重要です。
前述したように、最適な防水工事の種類の見極めについても実際の施工についても、自分でやるより専門業者に依頼したほうが失敗しません。
とはいえ、残念ながらこの業界には受注だけ行い実際の施工は下請けに丸投げしてしまう業者もおり、中間マージンによるコストダウンの関係で手抜き工事になった結果トラブルが発生してしまう事例もあります。
信頼できる業者を見つけるコツとしては、受注のみで施工は下請けに任せるパターンが多い大手の業者ではなく、職人が直営している地元の専門業者から探してみるのがひとつのポイントです。
職人が直営している店であれば発注すればその業者が直接工事を手掛けてくれますし、中間マージンも発生しないので仲介手数料のような余計なお金を支払う必要もありません。
トラスト美装は福岡県の筑後市エリアを中心に数多くの工事を手掛けている塗装職人直営の店で、完全に自社職人だけで相談から施工、アフターフォローまで一貫して行っています。もちろん防水工事の施工実績も数多くあります。
建物診断・お見積り・ご相談に料金はかかりません。防水工事をご検討中の方はまずはお気軽にトラスト美装へお尋ねくださいませ。